第7話 燕と大砲

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『ゴードンさん、テオドール!!』  もうすぐ森の街道を抜けて、街の石畳が見えてくるその分岐点に近い場所で、聞き慣れた声が空から響く。馬の手綱を片手に持ち替えて、ミーンフィールド卿がロッテを呼び寄せる。 「ロッテか。街と城の様子はどうだ」 『街の建物はあちこち倒壊して大変よ。鳥達総出で救出に出てるわ。それと、ロビンさんも無事よ。工房の鉄梃で、家具の下敷きになってる人を助けて回ってるわ。城の中庭は救護室になっていて、騎士達は大広間に集合よ。それとテオドール!あなたのお父様はそのロビンさんが助けてくれたのよ!』 「何だって?!本当かい!」 『ええ!あなたのお母様へもお手紙を出したわ。心配は不要よ。お父様は先代騎士団長様達に呼び出されて、今は救護室で働いているわ。50席以下の騎士達は皆、町で救助活動よ。お城を開放して怪我人や動けない人を収容中。それで、お城の皆は無事よ。怪我はないわ。アンジェリカさんも、入江姫達も』  ミーンフィールド卿が微笑む。 「テオドールの御父上に頼みに行く手間が省けた。流石はローエンヘルム卿だな」 「僕、ロビンさんにお礼を言わなきゃ……」 『今は城下を走り回ってるけど、後でお城で会えるはずよ。お礼は、その時にたっぷり言ってあげて』 「はい!」  今さっき抜けてきた森が一斉にざわめく。思わずミーンフィールドが馬上で振り返ると、紅い空と雷鳴が、先程よりやや近づいてきて見える。そして、森の街道を駆け抜けてきた二人の遥か遠く後ろで、雷とは違う低い音が微かに響く。 『様子が変よ。今の音は何かしら、生き物の声じゃないわ』 「あれは……大砲の音だ。ロッテ、先に城に行くんだ。テオドール、全力で駆けるぞ!!」 「はい!!」  二人が同時に馬に鞭を当て、白い小鳥がひらりと舞い上がった。
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