第9話 雷鳴は轟く

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『まあ俺は魔法使いだが、喧嘩の心得はあってだな!!!』  突風を纏った鷲が、鋭く大きな足の爪で、全力でドラゴンの顎を蹴り上げる。 「さすがは元不良少年。そういえば私はお前と素手で喧嘩して勝った記憶がないな」 『負かした記憶もねえけどな。お前は頑丈すぎるんだよ。アンジェリカの奴、容赦も手加減もしやがらなかったな。五体吹き飛ぶかと思ったぜ』 「御前試合を思い出すものだ。しかし臨月でなおあれだけの魔法を使えるとは。……母体が無事だと良いのだが」 『吉報を届けてやろうぜ。出産祝いにな!』  顎を蹴り上げられて上向きになったドラゴンの頭を再度足の爪で掴み上げ、地震で割れた地面の石畳に叩きつける。普通の動物であれば命はないはずだが、石畳にぶつかったドラゴンから、金属の様な音がする。 『やっぱり、妙に頑丈にできてやがる……』 「何かしらの『銀』を全身に纏っているらしい。普通ではないものだ。成程、弓も大砲も通らないわけだ」  蹴り上げられたドラゴンとほんの僅かに瞳が交差する。動物的な赤い瞳の虹彩の奥に、僅かに人の瞳のような、銀色の光が揺れている。 「…………思った通りだ。操り手がいる。ファルコ、森まで誘き寄せろ」 『了解』  ミーンフィールド卿が、花の剣を抜く。そして、赤い瞳の奥の銀色の僅かな光に、言い放つ。 「我らの城が欲しければ、我々を倒してから行けば宜しい。もっとも、我々にはこの後『予定』があるゆえに、命など簡単にはくれてやらないが」 『お前もなかなか言うじゃねえか。全面的に同意だ。そら、行くぞ!!』  ファルコがドラゴンの頭を掴み上げ、森の方へと舞い上がる。ドラゴンが激しく暴れて鷲の爪から逃れ、鋭い牙を剥く。 「ファルコ、低く飛べ!森へ突入するぞ」 『任された!しっかり掴まっていろ、舌を噛むなよ!!』  二度、三度、挑発するようにドラゴンの上空を優雅に舞って見せてから、そのまま一気にファルコが急降下する。
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