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突如として、大砲の音が響き渡る。
『あれは!?』
二人が目を見張る。
「落雷が来る!!ありったけ撃ったら大砲を捨ててすぐに森へ逃げ込め!!」
「了解です!!俺達ゃ北の民は悪天候には慣れてるんですぜ!!」
「羨ましいな。こんな雹や霰など初めて見たが、南の民へは良い土産話だ。全員、あと少し頑張ってくれるか!」
1隊を率いて声を上げている青年が、自分達の知っている誰かに似ている気がする。そんな青年の肩に、1羽の燕が止まっている。
『あれは………ガエターノだ』
「………そうか、もしや、オルフェーヴルの兄君かもしれない。街道を守ってくれたという」
怒るドラゴンが雷を大砲に落とすよりも早く、兵士達が森の茂みへと飛び込んでいく。
『見たところ、大砲はあと5基か。5発撃てたら御の字だな』
「………隙が出来るかもしれない。空を注意して見ていてくれ」
『背中に降ろせって言ったが、どうするつもりだ』
「………あの銀の鎖さえ破壊してしまえば、ドラゴンが暴れることはなかろう。危ない賭けだが、合図をしたら全力で下降しろ。私は飛び降りる」
『何だと!?』
「任せたぞ」
大鷲が、鷲らしからぬ息を吐く。
『昔からお前はそういう奴だったな』
途端に、空中遥か、紅く染まった空よりも高くから、絹を裂くような独特の鳴き声が響き渡る。大砲に気を取られていたドラゴンに、ありとあらゆる種類の猛禽類達が急降下し一気に襲いかかっていく。
『お前達、何故ここに………そうか、エレーヌとロッテか!!!!』
大鷲が機を逃さずに一気に空へと舞い上がる。大小様々な猛禽類達が、ドラゴンの顔に群がり、嘴や爪を向けて襲いかかっていく。
『頼んだぞ、相棒!』
ドラゴンの背中の上まで舞い上がった大鷲が、大きな脚の爪でドラゴンの長い胴体の中心を、空中で押さえつける。
「任された。鳥達にも伝達を。合図をしたら全力で下降しろ。今からこのドラゴンの背中に、雷を落とす」
ミーンフィールド卿が、大鷲の背中から大きく揺れるドラゴンの背中へ飛び移る。革の手袋で銀の鎖を掴み、言った。
「……銀の鎖、そうだ、これは我が家にとっては仇討ちのようなものだ。失敗など、するつもりはない」
大鷲が、暴れようとするドラゴンの背中に脚の爪を食い込ませ、ありったけの力を込めて言う。
『生きてたらその誉れ高き騎士の仇討ちとやらを、鳥達皆で大陸中に広めてやるよ。ただしうっかりしくじった場合は、城にお前の無茶っぷりを20年分まとめて報告してやる。気張れよ!!!』
ドラゴンの背中に飛び移ったミーンフィールド卿が、波打ち揺れる銀の背の上を走りだした。
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