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ベルモンテが微笑む。暖かいミルクに蜂蜜が溶かし込まれている。喉を気遣ってくれたのだろう。
「あなた方は素敵な方だ。飲み物を頂いて、少し眠ることにするよ」
枕元の鉢植えから微かに良い香りがする。人生の大半を旅に費やし、色んな国を経巡ってきたが、こんなに親切が身に沁みたことはない。良い香りのせいか、今までに見たこともない柔らかな表情で眠っている入江姫を再び見つめて、
「何てお礼を言えばいいのかわからない。今は、何も持っていないけれど………」
「気にすることはない。人をもてなすのは嫌いではないのでな。そこの花も、美しい姫君を間近で見て心なしかいつもより張り切っている様だ」
「花が?」
「私は昔から、木々や花と語り合う力を持っている。この顔のせいで、信じてはもらえないがね。………だが、木々や花と語り合えるおかげで、ここにはどこよりも味わい深い日々が在る。花達に頼めば、蜂達を介してこうして美味しい蜂蜜も得られる。苺の育つ場所もわかる」
味わい深い苺、驚くほど芳醇な蜂蜜、そして良い香りの鉢植え。緑をよく知る者の歓待はいかなる王宮にも勝るらしい。ベルモンテが言った。
「魔法使いが住まう国、というのは本当だったんだね」
「私の母は魔法使いだった」
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