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二人が顔を見合わせる。エレーヌ・フェルメーア・リ・カールベルク。22歳の若き女王陛下。花や鳥をこよなく愛する心優しい姫君だった頃から、ファルコとゴードンはこの女王陛下をよく知っていた。堅物な騎士と伝法な魔法使いを引き立ててくれたのは、2年前に亡くなった彼女の父でもある先代国王である。
『今年でおいくつだったかしら』
「22だ。即位して2年か。全く、この俺としたことが、まあ、うん、そうだな………。おいロッテ、いい酒がある」
『鳥が飲んだら死ぬと思うんだけど?』
「恋で死ぬより酒で死んだほうがマシだろ。飲もうぜ」
『ご主人様のくせにいいこというのね。適当に薄めてちょうだい。付き合うわ』
階下から異国の琴の音色が聴こえてくる。謁見室は自分達の部屋の真下の階だった。きっとあの吟遊詩人が奏でているのだろう。
「いい音色だ」
明日は二日酔いだろうか。主人との付き合い酒は程々にしておかないと、『いつもの』窓辺へ飛んでいくのも叶わない。
『心があるなら 言葉はいらぬ
ただ唇を あわすだけ……』
ベルモンテの異国風の節回しの歌声が、夜の城を静かに優しく彩る。ロッテが窓の外に視線を投げた。鳥にとって夜は眠る時間だが、こうして異国の美しい恋の歌を聞きながらお酒を飲むのも悪くない。
「いいよなあ、こちとら唇を合わせた日には間違いなく首が飛ぶんだ」
『ほんと残念よね。私、唇ではなく嘴しか持ってないの』
「あのでっかい髭を『乗り越える』つもりなら、唇よりは嘴のほうがいいだろうよ」
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