第1話 梔子と橘の話

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『わかっているわ。でもやっぱり、唇に憧れちゃうの。………ご主人様も、首より先に恋の翼を飛ばすべきじゃないかしら。陛下のお部屋はすぐそこよ?森まで通う必要もないし、きっと言葉もいらないわ』  即位前から互いをよく知っていた若く美しい女王陛下とその腹心の『鳥の魔法使い』が相互に抱いているであろう『思い』を見抜き、こっそりロッテに教えたのは、他ならぬミーンフィールド卿である。 「はは、違えねえ。そろそろ縄梯子を用意すっかな……」  それぞれに密やかな思いを胸に抱えながら、それを押し隠すように軽口を叩きあう一人と一羽の夜が、傾く月と共に静かに更けていった。
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