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カールベルグ王国の国境の森の入口に建てられた館の窓から、外の青々とした美しい森を見つめ、そんな騎士が呟く。
「森の機嫌がいいな。今日は午後から久々の雨らしい」
既に名の知れた騎士ではあったが、魔法使いの様に『植物の声を聞き取ることが出来る』力を持っていたミーンフィールド卿が就任したのは、小さいがいくつもの国境と接している重要な森の警備という仕事だった。
『羨ましいわ。私も花の声とか聞いてみたいわ。そこの植木鉢の子はなんて言ってるの?』
白い小鳥が窓際の薔薇の鉢植えの前に降り立って問いかける。
「うむ。『お嬢ちゃんも毎朝ご苦労なことだ。こいつは根無し草な上に堅物と来ている。植物だったらとっくに枯れていただろうなあ。とっとと嫁さんを見つけてきてやりな』だそうだ」
城から飛んできたこの『友』がさえずるように笑う。
『彼にお嫁さんが出来たら私ここの窓から入れなくなっちゃうわ。それはとても困ってしまうのよね』
「特に女性を避けているつもりはないのだが、そういった勘違いがよく起きるらしい。……最も、花の如き貴婦人達よりは、貴婦人の如き花々と語り合うほうが喜ばしいのは確かだが」
『そういうところなんじゃないかしら?』
「森の花達は私の顔を怖がることもない。この顔のおかげで、森に盗賊が出なくなったのはいいことだ」
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