第2話 針の騎士は花を描く

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「ゴードンの奴が同じこと言ってたぞ。あいつは一度だけ、帝国の連中とやりあったことがあるらしい。顔の傷もその時にやられたらしいが。俺と知り合うより前の話だがな」 「……入江姫のことは周りの国には伏せておきます。この城に来た以上、私の城に住まう大事な貴婦人のひとり。彼女と、彼女の素敵な吟遊詩人のおかげで、このお城も少しばかり華やぐようになりましたし」 「それがいい。部屋も用意できたし、そろそろ専属のお付きの侍女を探さねえとな」 「任せて良いですか」 「ベルモンテとは明後日に蚤の市を案内する約束がある。うまいこと話をつけておくぜ」  陽気でそれでいてどこか真摯な眼差しの吟遊詩人の青年。彼が突如帝国の襲撃に遭った島に住まう美しい姫君を助け出して落ち延び、この城に到着してから1週間ほどが過ぎていた。 「島との繋ぎならなんとかつけられるかもしれねえが、東の帝国の王宮はどうしても入り込めねえんだよな」 「あら、どうしてですか」 「向こうにも魔法使いがいるんだろうよ。………俺達みてえな姑息な手段で情報をかき集める悪党どもを阻止する為にな。何とか花の種の一粒でも手配できればいいんだが………」 「………あまり無理はしないでくださいね」 「朝ゆっくり寝かせてくれりゃいいさ」     
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