第2話 針の騎士は花を描く

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 まだ30半ばという年齢で女王陛下付になった『鳥の魔法使い』。態度も口も悪いが、決して大きくはないカールベルクという国には必要不可欠な人材だった。  自分の父親でもある先代国王が言っていたことを思い出す。 『あの二人を大事にしてやれ。彼らが持つのは決して強い魔法ではないが、必ずお前を助けることだろう』  自分はそんな二人がまだ『駆け出し』だった頃から知っている。出会ったのは何時だっただろうか。彼らふたりが遍歴の旅から城に帰ってきて、諸国の様子を面白おかしく報告するのを父王の傍らで聞いて育った。一緒に行きたい、と駄々をこねて亡き王妃を困らせたこともあったらしい。最近では魔法使いと共に遍歴の旅に出る騎士も少なくなってきている。  朝日が差し込む部屋の壁にかけられている、鳥の渡りの時期とルートが詳細に描かれた地図の中心に綴られた、自分の国の名前。 「………二度寝をさし許します。ただし朝の会議までには起きてくるように。また大臣達に叱られますよ。私も叱りますけど」  ファルコが片方の口元だけを少し吊り上げるように笑う。よく知る笑い方であり、今の自分に対してもそんな『柄の悪い』笑い方をしてくれる数少ない男が言った。 「いい目覚し時計だったが、もう少しだけ寝るとするぜ。………見つからねえうちに帰れよ」  放り出された布団を手に取って、ソファに再び横たわる。     
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