第2話 針の騎士は花を描く

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 静かな朝だ。何事もなく、全てが杞憂で、平穏無事であればいい。まだ眠りの気配が濃い、朝の城下町を見下ろして、エレーヌが目を細める。  彼もまた、眠る振りをしてくれているのだろう。部屋の窓辺に、一羽、一羽と鳥達がやってきては、エレーヌを前に、うやうやしく、それでいてちょっとユーモラスな仕草でお辞儀をしてくれる。そんな鳥達を一羽一羽撫でてやると、暖かい羽の感触が、少しばかり不安な気持ちを拭ってくれた。
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