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歌うように陽気なおしゃべりが、何とも心地よい。
「騎士団に掛け合ってみたが、第2席のティーゼルノット卿が、ご令孫のひとりをここで修行させたい、と言ってきた」
机の上に手紙が乗っている。
『先代副団長様ね』
「私とファルコは昔からしょっちゅう叱られていたがな。ご健勝で何よりだ」
カールベルク騎士団の第1席と第2席は終身名誉職になっていた。先代国王の片腕を勤めていた騎士団長と副騎士団長である。
「私もとうとう、上司の孫の面倒を押し付けられる歳になったということだ」
『お名前は?』
「テオドール=パーシファー・ティーゼルノット。今年で15になるそうだ」
手紙を手に取って、ミーンフィールド卿が言った。
「……それで、この手紙だが、何故かこういうものが同封されていてな」
封筒の中に、一本のリボンが折り畳まれていた。リボンには、少し色褪せた糸で、一輪の花が『途中まで』刺繍されている。
『あら、すごく素敵ね!それにどこか新しい雰囲気の柄だわ。どこかのお嬢様の手習いかしら』
「手習いか」
リボンを持つミーンフィールド卿の手元にやってきて、ロッテが首を傾げて言った。
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