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ミーンフィールド卿が微笑んだ。そして、
「着いてきなさい」
ぽろぽろと溢れる涙を服の袖で無理やり拭いて、ぎゅっと矜持を保つように背筋を伸ばし直した背の低い少年を、心配そうに自分を見やる小鳥を肩に乗せたまま、何も言わずに静かに館へと促した。
いつもの静かな2階の、いつもと何も変わらない私室の窓際の植木鉢に、ミーンフィールド卿はリボンを見せて問いかけた。
「君らは、どう思うかね?」
風もないのに、ほんの僅かに花が揺れるのを見て、テオドールがぎょっとして真っ赤になった目を丸くする。
「………『へえ、この坊やがねえ。うむ、悪くないぞ。この花びらの形!若くて初々しい俺好みのべっぴんさんだ。もっと明るい色だといいけど、こいつぁずいぶんと糸が古いな。おい親父、もっといいやつ買ってやれよ。お前のお弟子さんなんだろ?』だそうだ」
涙がひっこみそうな顔で、まじまじと目の前の騎士を凝視する。
「城ではあまり知られていないが、私は魔法使いでもある。こうして、木や花と語らう、それだけのささやかな力だが」
背の低い少年に合わせるように、少し身体を屈めて言った。
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