第2話 針の騎士は花を描く

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「丸で深窓のご令嬢のような力だ、と揶揄されたこともあった。花と語らうのが、恥ずかしかった時期もある。君くらいの歳の頃だった」  部屋に置かれていたのだろうハンカチが、大きく、そして細やかな剣傷の多い手から差し出される。 「騎士が美しい女を愛すれば美徳なら、その手で美しい花を描くのもまた美徳たり得ると私は思う」  その落ち着いた声が、たった先程出会ったばかりだというのに妙に心に響く。 「………けれど、父が、許してくれなくて。おじいさまみたいな立派な騎士になれって。父は事故で片足を無くして、騎士になれなかったから、僕にはとても期待してるみたいで………」 「成る程」 「『刺繍は騎士がすることではない』って。それで、おじいさまに『一番厳しい騎士のところに修行に出してほしい。できれば余計な世俗の誘惑などない場所で』って頼んで………」  肩の上のロッテが吹き出す。 『ゴードンさんったら、めったにお城に帰らないせいであらぬ誤解が生まれてるじゃないの!』 「いつものことだ」  ミーンフィールド卿も涼しい顔で返事を返す。 『そろそろお城に顔を出しておいた方が良いんじゃないかしら』 「噂話で私に角や牙が生える前にな。ファルコに連絡しておいてくれ」 『部屋をきちんと片付けさせておくわ!』     
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