第2話 針の騎士は花を描く

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 カーテンを開けると、西日が差し込む。 「刺繍するにはやや眩しい部屋かもしれないが、天窓もある」 「……本当に、いいんですか」  ミーンフィールド卿が、口鬚に手を当てて片目を閉じ、少し笑ってから答える。 「最終的に立派な騎士に育ってくれれば良い。過程を指定されているわけではないのでな。……世俗を離れた場所での修行、つまり人目など一切気にする必要はない、ということだ。違うかね?」  こういう類の人間を、祖父は何と呼んでいただろうか。テオドールは思わず数秒考え込んで後に答えを出す。 (………そうだ、『食わせ者』っていうんだっけ)  だが、初印象ほど恐ろしいわけでもない。今までに会ったことがあるどんな大人とも違う、独特の雰囲気は、この壮年の騎士が、緑と語らう魔法使いも兼ねているからなのだろうか。  騎士でありながら魔法使いでもある男。ふとテオドールは考える。  『騎士でありながら』、別のことを勤めることができる道があるのなら、自分は針と糸を捨てずに、それでいて騎士として生きていけるのではないか、と。 「………騎士で、魔法使いなんですか」     
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