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卿が掲げたランプに照らされて、色とりどりの花々の絵が、丸で香りもそのままに、豊かに、そしてかつ細密に描き込まれている。花の持つ特徴もまた、絵の脇にペンで細やかに書き記されている。
「かつて南の宮廷の画家に、細密画を教わったと言っていたな。常春の国なだけあって、それはそれは美しい植物園があったらしい。旅の道端で出会った花々も記されている。図案にしたければ貸そう」
ミーンフィールド卿が、年若い少年の輝く瞳を見て、静かに微笑む。
「勿論、毎朝の稽古が終わったら、という条件付きでな」
テオドールがぱっと背筋を伸ばす。
「明日から?」
「そうだ。君は早起きは得意かね?」
「明日から得意になります」
「よろしい。針と糸を調達せねばな。刺繍は教えられないが、教本くらいは取り寄せられるだろう。男児たるもの親には言えぬ秘密のひとつやふたつ持っていてもよかろう。家に伝わることもない。事後承諾だ」
「事後承諾?」
「立派に育った騎士が、美しい刺繍を己の袖に施す日が来るまでの話だ。……さあ、次は厨房を案内しよう。食事は毎朝自分たちで用意するが、君は育ち盛りだ。ここは野菜から果実、蜂蜜まで何でも揃うが、君は育ち盛りだ。肉の量が足りなくなるだろう。その手はずも整えておかねばならない。庭の稽古場も二人では狭かろう」
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