第2話 針の騎士は花を描く

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「そうなるまでは、か」  また当て所ない旅に出るのも悪くない。根無し草の阿呆鳥に逆戻りするのも楽しそうだ。けれど自分もまたあの王女同様、この小さく穏やかな国を愛しているのだろう。そう、歳月はこの自分をもいつの間にか変えたのだ。ただの根無し草だったはずの男が、愛する人が愛する国を、同じように愛するまでに。  部屋の窓から馴染み深い城下町の風景を静かに見下ろす彼独特の銀色の髪を、美しい朝焼けが穏やかに染めていった。
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