第6話 揺れる大地

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 パチリ、パチリという鋏の音と共に、雲の隙間から光が差すように、地面に太陽からの光が差してくる。   朝靄が太陽の光に道を譲るような光の筋と共に生まれるこの木漏れ日こそが、地面の小さな植物達を育てていくのだ。生命の不思議さを実感しながら、テオドールは、ところどころ紅く色付いてきた樹の隙間から見えるようになった青い空を見上げる。そこに、声がした。 「相変わらずだねえ、ミーンフィールド卿」  振り返るといつの間にかそこには、茶色の髪に緑の瞳の、細い剣を腰に佩いた、背の高い騎士が立っていた。 「アンジェリカから元気でやってるか見てこいって言われてね」 「つまり『あの唐変木が森でサボってないかきちんと見てこい』と言われたわけだな」 「ご名答」 「いつも書類仕事を押し付けて申し訳ない、オルフェーヴル卿」 「どうってことないさ。君が近習のテオドール君かな。確か第2席のお孫さんの。今後も宜しく。僕はオルフェーヴル・セルペンティシア・ド・カンタブリア=アルティス。名前が長いから、オルフェーヴルって呼ばれているんだ。騎士団では第4席」  思いのほか気安くひょいと頭を下げられて内心戸惑いながらテオドールも胸に手を当てて返事を返す。 「お名前はかねがねうかがっておりました。第五席近習のテオドールと申します」 「ふふ、礼儀正しくて何よりだよ」  木から降りてきたミーンフィールド卿が言う。 「館まで案内しよう。それと、お手合わせを願えるだろうか」 「君とかい?」 「こちらのテオドールと」 「えっ僕とですか!?」 「剣の速さを武器にするなら一度は経験しておくべきだろう。オルフェーヴル卿の『速さ』を」 「君と勝負すると1試合に数時間はかかってしまうからね。御前試合時間の最長記録を更新したくらいだ」 「最長記録を!?」  目をぱちくりさせるテオドールにオルフェーヴルが言う。 「アンジェリカのあの剣に堪えきるタフネスな騎士相手に長時間戦っても分が悪い。しかも試合となれば鬼のように強いミーンフィールド卿だ。本来なら初手でささっと倒さないといけないんだけど、なかなかそうはいかない、もう、それは必死だったよ」  ふとミーンフィールド卿が懐かしげに口元に笑みを浮かべる。 「7席以上の御前試合は3本勝負だった。人生で何度も色んな相手と剣を交えてきたが、あの御前試合は、一生忘れないだろうな」  何故か少し照れくさそうにオルフェーヴル卿が頭を掻く。そんな彼に卿は言う。 「アンジェリカは健康でいるかね」 「ちょうど一昨日ローエンヘルム卿の鍛冶場に彼女の剣を隠したのがばれて大目玉を喰らったよ。健康そのものだね。お医者様も太鼓判だよ」 「昼食ついでに、出産前後の妊婦と新生児向けの薬草を煎じたものを用意してこよう。テオドール、良い機会だ。剣も手に合うように直したばかりだろう。運が良ければ、国で2番目の騎士から1本はとれるかもしれない。名誉なことだ」
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