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柵に寄りかかりながらうなだれる。優希の目線が花に移る。
「あれ?色変わった?」
先ほどまで綺麗な水色の輝きを放っていたはずの花が、今では少し薄茶色がかっている。
この短時間の間に、枯れていくような現象に驚く。もう少し、間近で見て確認しようと、
片膝をつき、花に顔を近づけた途端、目の前が真っ暗になった。
「は?」
自分の驚いた顔も確認出来ないほどの暗闇。
優希は突然、真っ暗闇に佇んでいた。両足が動かない。上半身はかろうじて動かせる。周りを見渡すもただただ真っ暗闇が続いているのみ。どちらが上でどちらが下なのかも分からない。理解出来ない。
「いや、いやああああああ!」
がむしゃらに両手を振り回す。どこにも当たる感触が無い。息苦しさも感じる。汗も噴出している。嫌悪感を感じ、両足に視線を落とす。落としてしまった。
白い手が優希の両足首をつかんでいた。手から先は何もない。何も見えない。
「きゃああああ!」
必死に手を振りほどこうと両足に力を入れる。しかし、力が初めから無いかのように全く入れることが出来ない。次第に、手が両足首をつかんだまま、先の見えない闇の向こうへ引きずり込むように動き出した。踏ん張れず、前のめりに倒れこむ。ますます、手の力が増し、引きずり込む力も強まる。優希は抵抗しようと思い、両手の指で暗い空間を精一杯ひっかく。どんどん引きずり込まれる。ひっかき続ける。
ついに、優希の両手の爪はめくれてしまった。
痛みに顔をしかめる。次第に抵抗する気力を失い、引きずられるままとなった。跡には、
血の付いたひっかき傷が残るのみとなった。
翌朝、通報を受けた警察官が公園を捜索していた。ブランコの近くに行く。
「これは......」
警察官は白い手袋を着け、地面に落ちていたデジカメを手に取った。すぐに、他の捜索隊へ連絡する為に、自分のパトカーへと足を向ける。ブランコの側にある、茶色く干からびた一輪の花には眼も向けなかった。
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