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力任せにリールを巻く。やっとねがかりが解消されたのか、重みを感じながらも、巻き上げることが出来た。手元に手繰り寄せようとする。黒い糸状の物が何本も糸に巻き付いている。
「何だこれは?海藻でも無さそうだが」
絡みついた黒い糸を眺めつつ、糸を巻き上げる。糸の先に引っ掛かっていた物に気付き、
眼を見張った。
真っ白な髑髏が引き上げられたからだ。リールを掴んでいた手が震える。友人の言葉を思い出す。全てを悟る瞬間、後頭部に衝撃が走った。
「がっ!」
突然の凄まじい痛みに耐えられず、頭を両手で押さえながら後ろを振り向く。見慣れた焼けた肌。口元から覗く白い歯が見えた。笑顔で右手に掲げたバットを次郎の頭に再度振り下ろす。血が頭から吹き出し、流れていく。透き通った湖の中に。自分はこれからどうなるのかと、ふと考えをよぎらせながら、意識は深い闇へと吸い込まれていった。
数週間後、防波堤に二つの影。白い歯を覗かせながら、釣りをしている男へと、軽い口調で話しかけている男の姿。話しかけられた男も、話相手が出来て安心しているのか、表情を緩ませる。
充分に打ち解け合えたところで、焼けた肌から映える白い歯を覗かせながら、軽い口調で男に告げる。
「ここら辺でいい場所があってさ。すぐに
沢山釣れたし、誰にも言わないなら、教えれるけど、どうかな。気になる?」
「ああ!是非、教えてくれないか」
「分かった。分かった。それじゃあ......」
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