第1章

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 だが、明宏にその都度相談し、ルアーや釣り糸を一緒に改めて挑んだりするうちに、その気持ちは徐々に薄れていった。  「今日こそは、たくさん釣るぞ」  一人鼻息を荒くして、湖へと歩いて行く。 森林に囲まれており、天気は晴れであったが、 薄暗さのほうが勝る。足元に散らばる無数の葉っぱは、長靴で踏む度に、ぐじゅぐじゅと 湿り気を帯びた音を発した。人一人がやっと 通れる程の道を歩き続ける。二十分程歩き続け、背負い続けたリュックが肩に食い込み、痛みを投げかける瞬間、視界が開けた。顔を伝う汗が顎から滴り落ちる。  薄暗い森林を抜けた先に、大きな湖が目の前に広がった。汗でびしょびしょになった体ごと飛び込んでしまいたいぐらい、透き通るように綺麗な水。湖の周りを一周するのに何時間かかるのかと思える程の広さ。何より、 透き通った湖にいくつもの魚影が映り、次郎の心は踊った。  早速、椅子や釣り竿、餌のセットを行う。 いつも順調に行えていた工程が、先ほどから歓喜に打ち震え、手先まで強張っていた為、 時間がかかってしまった。セットを終えると、 湖に釣り糸を遠くへリリースする。糸を巻き上げると、すぐに当たりがあった。すぐにリールを巻く。ザパンと水飛沫をあげ、大きな魚を釣り上げることが出来た。  「おお!こんな大きさ初めてだぞ!もっと釣ろう」  興奮を隠しきれず、釣った魚をすぐに手元に置いたクーラーボックスに入れ、またもリリースする。またすぐに当たりが来る。釣り上げる。その繰り返しであった。  到着した際に次郎の頭の真上当たりを照らしていた太陽は、今はオレンジの光を帯びて、 沈もうとしている。かなりの時間を過ごしたと内心で思ったが、釣りをする手はなかなか止められない。釣っても釣っても、どんどん魚が喰らい付くのだ。見たことも無い魚も中にはいる。家に帰って、どんな種類かじっくり調べようとも考えた。様々な思案を重ねていると、巻き上げていた釣り糸が何かにつっかかったかのように、糸を張ったまま固まる。  (ねがかりしたか?まぁ外せるだろう)  竿を左右に揺らしたり、上下に動かしたりするが位置は変わらず、つっかかったままだ。  「おいおい。冗談じゃないぞ」
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