第一章 見えない瞳

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夏の猛暑が続いた日、木の上に座り込んで、公園で遊ぶ子供たちをぼんやりと眺めていた。 楽しそうに走り回る子供たちはいつの時代に見ても愛らしいもので、騒がしくもあった。 「(………暑さだけはあるんだよなあ)」 手をうちわ代わりにして、扇ぐ。 今回の子供たちには俺の姿は見えていないようで、木の方を見ても何も反応しない。 俺は、大抵の人間の目には留まらない。 人間世界でいう妖というものだ。 かと言って、魂を食らったり、人間を脅かすわけでもなく、ただ存在しているだけ。 自分の存在に自嘲気味になっていると、 一人の女の子がぼんやりとこちらを見つめていたことに気付いた。 「(まさか、見えてんのか、?)」 ぼーっとこちらを見つめる少女に、何故か俺は惹き付けられた。多分、この時は暇つぶし程度にしか考えていなかったんだと思う。 「おい、娘」 これが俺と彼女が知り合ってしまったきっかけ。
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