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「何がおかしい?」
急に笑い出した目の前の少女に、俺は首を傾げると収まらないようでまだ笑っている。
そんな彼女が笑いにひと段落ついた後、
可笑しそうにこう言った。
「……なんか、喋り方が凄い昔の人みたい。
武士って感じがする、
面白いね、お兄さん、」
あながち間違えではない。なんて、思いつつ「そうか?」とあやふやに返した。
まだ少しクスクスと笑ってる彼女に頬をかいて、照れくさくなり目を逸らした。
その時に、周りを見ると周りの子供たちやその大人が穢らわしいものでも見るかのような目を彼女に向けているのに気付いてしまった。
「(俺なんかと喋ってるから、
こんな目で見られんのか?)」
明らかに違う冷たい視線に、俺は小さく息を吐いた。目が見えないとは言っても、彼女も何か感じるものがあるんじゃないか。
そんな、俺らしくもなく他人を心配してしまう。
喋るのはよそうか、なんて考えながらどこかへ行ってしまおうと足を動かそうとすると、彼女に手を掴まれた。
「(…目が見えないくせに、なんで掴めるんだ、)」
二度目の行動に俺はまた驚きを隠せない。
そんな俺なんて知らず、
彼女は綺麗な笑みを浮かべた。
「私、千花。
千に花って書いてちかって読むの。」
"お兄さんのお名前は?"なんて、俺を疑うこともなく表情をにんまりさせて聞いてきた。
俺の気遣いとか多分何も理解してくれねえんだろうな。
「……天、テンだ」
触れられる指先から、彼女の熱を感じた。
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