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 〈神様の胃袋〉が起動されてからひと月が経ち、僕らの街はほとんど溶けてなくなってしまった。人も草木も、もちろん僕らのアパートも形をなくし、街だったこの場所には今や物影ひとつ、物音ひとつない。  見渡す限り広がる荒野の下では、今頃新天地への期待と不安に満ちた人々の大騒ぎが響いているかもしれない。あるいは、新天地を前にしてもなお、彼らは白けた沈黙を貫いているかもしれない。いずれにしろ、僕とマグはそれに混ざれないでいる。
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