5人が本棚に入れています
本棚に追加
「私はね、ステーキが食べたかったの」
「好きだもんね、ステーキ」
「そうだけど、なんていうか、そうじゃないの。私が食べたいんだけど、私が食べたいからじゃなくて」
マグはもどかしげにナイフを動かす。押さえつけた果物が、皿の上でぐらぐらと揺れる。
「あなたが固形ミールを食べてくれたとき、嬉しかった」
「結局その場で吐き出してしまったけどね」
「そんなの関係ない。食べようとしてくれたのが嬉しかったの」
ようやく真っ二つになった果物を、マグは見下ろす。それ以上切り分ける気がないのか、カトラリーを握った手を止める。
最初のコメントを投稿しよう!