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「私はね、ステーキが食べたかったの」 「好きだもんね、ステーキ」 「そうだけど、なんていうか、そうじゃないの。私が食べたいんだけど、私が食べたいからじゃなくて」  マグはもどかしげにナイフを動かす。押さえつけた果物が、皿の上でぐらぐらと揺れる。 「あなたが固形ミールを食べてくれたとき、嬉しかった」 「結局その場で吐き出してしまったけどね」 「そんなの関係ない。食べようとしてくれたのが嬉しかったの」  ようやく真っ二つになった果物を、マグは見下ろす。それ以上切り分ける気がないのか、カトラリーを握った手を止める。
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