2/5
前へ
/25ページ
次へ
「ねぇ、ちょっと! フォークが溶けちゃってる!」  飛んできた悲鳴に顔を上げると、マグが顔を青くして立っていた。その手に握られている銀色が、みるみるフォークとしての形を失っていく。 「別に構わないじゃないか。君だってそんなに使ってなかったし」 「なんでそんな呑気なの? 私はこれから何を使ってごはんを食べるの? 大事にしてたやつなのに……!」 「いつも食器なんて使わなくても食べられるもの、食べてるだろ。だいたい、フォークならドラッグストアに売ってるじゃないか。あれ、君が買ってやらなきゃ、いつまで経ってもはけないぜ」 「あんなプラスチックのなんていや!」  喚くマグの手の中で、フォークは融解を続ける。滴り落ちた銀色が跡も残さず床に染み込む。その雫が涙のように見えた。  フォークにもフォークなりの未練があって、フォークでなくなることを嘆いたりするっていうのは、あり得ることだろうか。そんな馬鹿みたいなことを、なぜだか考えてしまった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加