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マグに出会ったのは、三年前、レノたちとドラッグストアに行ったときだった。いつもそうするように、ぶつくさ文句を垂れながら栄養剤を手に取る僕らの前を、栗色のぼさぼさ頭が通り過ぎた。手にしたカゴには、誰も進んで手に取らない固形ミールがありったけ入れられていた。
気味悪がるレノたちに同意しながら、僕はそのぼさぼさ頭を目で追い続けた。会計を済ませたその少女は、店を出るよりも前に固形ミールにかじりついた。ぼりぼりと響く咀嚼音に、店中が静まり返ったのを憶えている。
そして僕は、そんな傍若無人な異端者に会うために、行きたくもないドラッグストアに足繁く通ったのだった。はじめの数日は苦労した。声をかけてみても、マグは「あう」とか「えう」とか言うだけだったのだから。ある日僕が固形ミールをかじって見せると、ようやく嬉しそうにしてくれた。
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