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つい一週間ほどまえにも同じ学校で一番人気の、男の子に告白をされたが、将来の夢を理由にお付き合いを断った。
美香は高校卒業と同時にアメリカの大学に留学をすると言う夢を持っていたからだ。
美香はリビングに置かれた椅子に座ると、薬箱から睡眠薬を取り出し、コップの水と一緒に飲み込んだ。
「少々のことにでへこたれていたら、留学なんてできやしないわ……」
美香は愚痴をこぼすと直ぐにとうとうとし始めた。時計が五分ほど進むと首がかくりと折れた。その拍子にズルリと嫌な音がしたかと思うと、美香の頭が床に向かって滑り落ちた。
「ん……?」
美香は冷たい床の感触に顔をあげ、目をこすろうとするが手の自由が利かないことに気がついた。美香は体を起こすと傍らにある窓ガラスを見つめた。そこには人間の頭に、陰気に波打つ、ムカデの身体がついた、ムカデ女の姿が映っていた。
「きゃぁぁぁ~~っ!」
美香は変わり果てた自身の姿に叫び声をあげた。リビングに続く廊下からネグリジェ姿の青花があくびをしながら顔を覗かせる。
「夜中になんの騒ぎ?」
青花は裂けた口からカビた蜜柑色の牙を覗かせたムカデ女と目を合わせた。美香は震えながら母に向かって首を振って見せた。
「違う……」
「きゃぁ~っ、あなた化物、化物がいるわ!」
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