眠り札

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 青花は叫び声を上げると這うようにキッチンに入り、ガスコンロの脇に置かれた殺虫剤を手に取った。 「化物って何を言っているんだ……」  昭雄は趣味のゴルフ用クラブを布で磨きながらリビングに入ってきた。寝酒のウィスキーを飲みほろ酔いだったその顔が恐怖に歪む。 「あ、あなた……」  青花は手に持った殺虫剤を昭雄に渡した。 「あ、あぁ、下がってろ……!」  昭雄は殺虫剤とゴルフクラブを手に美香に迫った。美香は慄き壁ぎわに身を寄せた。 「違う、こないで! 私よ、美香よ、お父さん……!」  昭雄の耳にはムカデ女の声はギギギと唸っているようにしか聞こえなかった。 「死ね、化物!」  昭雄は叫ぶと殺虫剤を美香の顔めがけて吹きかけた。白い殺意が顔に触れたかと思うと、ただれるような激痛が美香の瞳を襲った。 「あぁ~、目が、目が潰れちゃう!」  美香は身をよじり床に倒れると、激しくのたうち回った。美香は目をこすりたかったが腕がないために、ただ叫ぶことしか出来なかった。その背中に昭雄のゴルフクラブの一撃が振り下ろされた。ぐちゃりと重い音が聞こえたかと思うと、そこから透明の体液が染み出してきた。 「あぁぁぁ~っ!」  昭雄は身体を丸め震えるムカデ女をゴルフクラブで牽制すると叫んだ。     
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