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「青花、お湯を沸かせ。ムカデなんてやつは頭から湯をかけてやれば簡単に死んでしまうものだ!」
「え、えぇ、わかったは……!」
青花はうなずくと、アルミ製の鍋に水をはりガスコンロのうえに乗せた。コックを捻るとゴワッと音を立て灼熱の青い炎が鍋底を包みこんだ。
美香は顔を上げた。キッチンの影で即座に熱を帯びる鍋の湯気が見えた。殺される……。頭のなかを一瞬で恐怖が支配した。
「嫌っ!」
美香は唾液のついた黒い牙を光らせると昭雄の足に噛み付いた。
「うわっ!」
中年太りした昭雄が膝をついた。ふくらはぎに二つの大きな穴があいていた。その足はムカデ女の持つ毒のせいで紫色に変色すると、見る見るうちに腫れ上がっていった。
美香は怯む昭雄を見つめると、ゾロリ、ゾロリと爪音をたてならが廊下に逃出した。ゴルフクラブを握り直した昭雄が血の流れる足を引きずりながら後を追いかけてきた。
「絶対に逃がさんぞ!」
「なんで私がお父さんに追い回されているの……!」
美香は床に背中から流れ出す体液を擦りつけながら、トイレのなかに逃げ込もうとした。
その刹那、昭雄が扉に向かい肩から体当たりをしてきた。
「逃がさんぞ、化け物め!」
「ぎゃぁっっっ~~~~~~!」
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