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いつもの様に朝起きて、みんなが揃って窓を見ます。
アッ! こりゃ大変だ!
今日の富士山に鎮座しているのは、
「山中さん」ではなく「青木さん」ではありませんか!
こうなりゃ交通ルールも無視していい日!
年に数回、気まぐれで現れる「青木さん」に、
関東地方は大騒動であります!
「青木さん」が睨んでいるのは長野県の戸隠連峰あたり。
北北西の方角ですね。
そうなんです。青木さんの視線の間にあるのは、
関東ではなく、甲信越なんです。
じゃあ甲信越にどんな魔法がかかるかというと、
別に何の魔法もかからないんですね!
もしかすると気持ちばかり、恥ずかしがり屋になる程度で、
別段変わる事は無いんです。良かったですね、甲信越!
その間「山中さん」はどこ行っちゃったのかというと、
……本当に、どこ行っちゃったんでしょうね?
とにかくいないんですよ。
神は不在なので、自然の摂理に乱れが生じてしまうのです。
その為、関東地方に一日千秋の思いで潜伏していた野郎どもが、
この日いっせいにブワッと町から溢れ出てくるわけなんです。
彼らは半年ぐらいマンホールの下で「青木さん」の出現を待っていました。
半年あれば婚活だって捗ったでしょうに、人生棒に振っちゃってさ!
女たちは「青木さんの日用シェルター」に身を隠します。
その間、女たちの家族である父とか兄とか弟は、
女装をして惑わしたり、マンホールに熱した油をかけて回ったり、
あの手この手で自衛します。
「山中さん」が「青木さん」にすり替わっただけなのに、
まるでこの世の終わりかの様に、ロケットランチャーを打ち合うのです。
関東地方ではない地域でやれば、誰もおとがめしない淫乱行動。
問題があっても法で裁かれ、命までは取られない程度の軽い罪です。
なのに今日の関東地方はお祭り騒ぎで、死者が続出する始末。
人は何故そんな危険を冒してまで、関東地方に夢を見るのでしょうか?
きっと、「山中さん」の目を盗む事が、
バンジージャンプに近いスリルを得られるエキサイティングな遊びとして、
世界中から注目されているって事なんでしょうね。
神様の気まぐれ、恐るべし!
ああ、こんな悲劇を誰が望んだというのでしょう!
他にやる事がないほど、平和な世の中なのかもしれません。
なんというか、夢ってものは人を変える。その言葉につきますね!
南無阿弥陀仏! 南無阿弥陀仏!
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