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敏夫さんと裕子さんが、お見合いをするんですって。
関東地方で産まれて、関東地方で育った二人。
どちらも指が全部そろったエリート。
はたして優秀な人材の二人は、無事に結ばれる事ができるのでしょうか。
裕子さんが敏夫さんに聞きます。
「敏夫さん、どうして指が全部そろっているんですか?」
敏夫さんは裕子さんに返事をします。
「僕は、親に英才教育を施された、箱入り息子だからです」
裕子さんはもう敏夫さんにメロメロ。
指が残っていればカッコいいって事ですからね。
ここではナンパじゃない男ほどモテるんですよ。
敏夫さんも裕子さんの可憐さが気に入り、
話は上手くまとまったみたいです。
その後、二人は各自の家に帰り、今日の事を振り返ります。
敏夫さん、お風呂に入りながら裕子さんの事を思い出します。
「裕子さん、素敵だったなぁ……」
そう思って先の事を考えた時、ポンッと指がヘシ折れ飛びました。
あらぁ、イケナイ想像までしちゃったみたいですね。
後悔先に立たず。泣いても笑っても無くした指は取り戻せません。
敏夫さんは明日すぐに裕子さんとの縁談を断ろうと考えました。
あくる日の朝、敏夫さんのもとに一通の電話が入ります。
その電話は裕子さんのお母さんからで、
「裕子はもう、敏夫さんにはお会いできない」との事らしいのです。
残念と思った敏夫さんでしたが、
自分もお断りをしようと思っていた旨を伝えます。
指が飛んだなんて、恥ずかしくて人に言えたもんじゃないですからね。
敏夫さんは内心で、裕子さんから断ってもらえてホッとしていました。
会社にも辞表を出した敏夫さんは、ハローワークにやってきます。
と、そこにいたのは裕子さん!
ばったり鉢合わせて気まずいですが、
嫌いになって別れたわけではないので、ご挨拶をします。
「と、敏夫さん、その指どうしたんですか?」
「あ、昨日裕子さんと会った後に、とんだ失態をしてしまいまして……」
ああ、気まずい気まずい。
しかし、裕子さんは嬉しそうに自分の手を見せます。
「あの、実は私もなんです。あまりに敏夫さんが素敵だったものですから……」
裕子さんの手は、指が一本なくなっていました。
はい、この縁談は和解にありつく事ができました。
指がなくなる事で、むしろきずなが深まったようですね。
ああ、恋は蜜の香りよ!
子を作ってからお幸せに!
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