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「だとしたらなんだと言うんだ!国が戦えというのなら戦わなければならないだろ!戦わないなら囚われ、愛国心を疑われる。それでは意味がな…」
「お前はそれと戦うべきだった!」
彼の声で私の言葉は遮られてしまう。
「お前はここの殺し屋たちよりも国という制度に立ち向かうべきだった。お前がここで武勇を立て、栄光に酔うのもいいだろう。そして何が生まれる?お前はなにも得られないし、なにも生み出していない。褒められて嬉しいか?やってることは殺しだ。お前は次のお前を出さないためにも国と戦うべきだった。お前は間違っている。何と戦うかを見誤っている。」
私は落ちている剣を見た。
古びたその剣はとてもじゃないが切れ味は悪そうだ。
切るというよりも叩き切るという感じだろうか。
いつ折れてもおかしくはない。
「お、俺は…。」
「もう1人の私よ。ここでお前は死よりも辛い体験をするだろう。国にたてついたお前も辛い体験をするだろう。どちらにしても辛さに変わりはない。死ぬ時まで、お前は生きている。手も足も武器さえもそこにある、なかったのは道しるべだけだ。迷ったのなら心に聞け。困ったのなら私に聞け。お前が悩み、間違い、どうしていいのかわからない時ほど、手を止めろ。歩みを止めろ。動きを止めろ。考えろ。集中して自分に問え。先を見ろ。今の行動を悔いるよりも未来の行動を先に見ろ。」
「…そこに正しい答えがあるとは限らないだろ!誰かに言われるままの方が楽でいいじゃないか。考えることは…疲れる。」
彼は落胆して頭に手を当てて言った。
「それが甘さだ。何よりも誰よりも甘い。お前の弱い部分だ。受け入れろ。そしてそれを超えろ。そこにこそお前があるというものだ。今のお前は死んでいる。生前は楽しかったか?死んだお前なら何をすべきだったかわかっていただろうに。」
唇を噛みすぎて血の味が広がった。
「…戦争は始まっている。」
「そうだな、ただし私とお前の戦争だ。もう一度言おう。その剣を取れ。戦う場所と相手はお前が決めろ。そこに求めたい答えがあるのならな。」
そう言って彼は私に背を向け歩き出した。
答えは勝ったものにしか与えられない。
負けられない、この剣じゃ今の私には不足している。
私は胸に手を当て、心の剣を強く握り直した。
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