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カウンターで貸し出しの手続きを済ませ、図書館を後にする。外は過ごしやすい気温で、柔らかい陽射しが燦々と照りつけている。もうすぐ夏に差し掛かろうとしていることを街に告げるかのように、住宅街には心地よい黄雀風が吹き抜けていた。
僕は家に着いた後の行動について思案することにした。まず、食事を済ませよう。簡単な物で構わない。あるいは、コンビニで買ったもので済ませてもいい。僕にとって、今手にしている本を読み漁る時間を確保することが、食事を簡素にしてでも優先することだった。
そんなことに思想を巡らせていると、肩の辺りに違和感を感じた。不思議に思ったが、その正体はすぐにわかった。雨だ。雨が降ってきた。降ってきた雨が僕の肩を濡らしたんだ。それは初めはシトシトと降っていたが、次第にバケツをひっくり返したような激しい雨に変わった。慌てて僕は手にしていた本を雨から逃がすように胸で抱え、アスファルトの窪みに溜まった雨水をバシャバシャと蹴って走り始めた。
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