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雨の中、きみのとなり
これは数週間前、夏が始まる前のお話。
僕は図書館で経済学の本を読み耽っていた。経済学の本と述べても僕が手にしたのはいわば入門書、経済学の父と呼ばれるアダム・スミスが唱えた自由放任主義など、経済学を学び始めた者が初めに覚える文言ばかりのものだ。
僕は今春から高校で経済学を学び始めた。しかし、授業には遅れをとらないよう必死なのが現状だ。元来、僕は教科書の内容を暗記するのが得意ではなかった。カラフルなインクで派手に飾り付けられた書物に踊る文字を覚えるのが、僕にはどうも苦手だった。しかし、それに反し派手に装飾されていない本、言ってしまえばシロクロ印刷で、添付されている図表や写真が最小限に抑えられている本を読むのは好きだった。それだったら僕は無限に読むことだって厭わない。今、目を釘付けにしている本も勿論その類だ。
空腹を感じ、本から顔を上げた。壁に掛けてある時計に目を移すと、図書館に入ってから長針が既に三周していた。読みかけの本を手にして立ち上がる。この本は家で続きを読むとしよう。僕はそんな目処を立て、貸し出しの手続きを行うためにカウンターに脚を向けた。
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