84人が本棚に入れています
本棚に追加
「残念ながらそっちは詳しくないんだよな」
地曳は拳を握り締める。
「超能力を魔法と呼ぶなんて痛いじゃない」
「超能力って言うのも痛いと思うけど。……なにがそんなに気にくわないの?」
青年の指摘に地曳は黙る。そうして我に返った。
青年にとって地曳は普通の女子高校生。本来ここまで噛みつくのはおかしい。しかも、目の前で見せられたモノに対して。
余計なことを口走っていた。
地曳はまた、唇をかんだ。
訝しげに眉をひそめていた青年だったが、地曳が黙ったのを見て「もういいかな」とため息交じりに言うと、灰のネコを抱え直してその場を去ろうと歩き出す。
と、過ぎる瞬間、腕に収まるネコの青い瞳と目が合った。
「――っ、待って」
気がつけば地曳は、青年の腕を縋るように掴んでいた。
青年の重そうな癖のある前髪が衝撃に揺れ、戸惑ったような目線が地曳の細い指に向く。
「そのコ、どうする気?」
「え。届けるよ」
最初のコメントを投稿しよう!