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ドアから出てきたのは、魔女のような女性だった。
といっても黒づくめなわけではない。着ている服は明るく、至る所に花がバランスよくあしらわれたデザインの綺麗なものだった。下にいたってはジーンズとラフだ。髪は一般人では似合わない、パーマを強く当てたスパイラルパーマ。
どちらかと言えば、見た目はファンタジー小説の挿し絵にいる明るい花の精。
「あなたも。……女の子だったとはね」
"魔女のよう"地曳にそう思わせたのは、彼女の持つ元々の空気のせいか、その時丁度灯った橙の妖しい光のせいか。それとも、目が合った瞬間、心臓のさらに奥深くにしまっているなにかを掴まれてしまったような、そんな恐怖心がほんの一瞬だけ顔を出したからか。
結城が名前聞かないから。そう苦言を呈しながらも、心なしか嬉しそうな彼女に、灰のネコ――ポンを渡しながら地曳の目は釘付けになった。
「あの店の前のネコたちと仲が良いみたいで。俺を怪しい人間と見なしたらしいですよ」
青年、もとい結城の自嘲気味な表情に、垂れた優しげな目を細めた彼女は頭を下げる。
「ポンを心配してくれてありがとうございます。明日葉です。……でもダメよ、あなたみたいな可愛い娘がどこの馬の骨かも知らない男についてきちゃ」
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