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「地曳矢恵です。大丈夫です。この人女慣れはしてるけれど、手とか繋いだことなさそうだし」「えっ?」
突然の地曳の辛辣な発言に結城が戸惑い、「あら正解」と明日葉はくすくすと笑う。
「さ、上がって。夕飯用意してあるの」
「じゃ、俺はテーブル出しておきますね」ため息を一つこぼした結城は慣れた様子でドアの向こうへと消えた。
「……親御さんが用意しちゃってるかしら?」
「用意してはいないですけれど……」
元々共働きの仕事好きで、地曳が高校に上がってからは鎖が解けたかのように忙しくなった両親から、家族LINEに『今日は各自』という連絡が来ていた。
しかしだからといって、初対面の全く知らない人の家で夕飯をごちそうになるというのは普通でない。
「じゃ、いいじゃない。料理が無駄になっちゃう」
迷うも結局、押し切られてしまったのだが。
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「花屋……なんですよね」
瓶に詰められた花を見つめながら、地曳は呟く。
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