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『ヒトは脆い生き物である』
ヒトに関して、どの分野の研究からも幾度となく証明されてきたことだ。
そして証明されなくとも、大半の人間が解っている。
己が弱くもろい生き物だと。
だからヒトは防衛するのだ。
異物が体内に入り込めば咳き込み、対策に健康を意識し、ヒトの狭間にあれば状況を読み、自らに被害が及びそうになればそれを避け、時に安息のために戦いを起こす。誰がために戦うのも、その実自らの心の平穏を保つためということもある。
各々の弱く脆い部分を守るために。
だからその危機において、ヒトの行動には差異が出るのだ。
優先されるは愛情、保身、名誉、利益かそれとも――
至って自然なこと。だが、困ったことにヒトはそこにも優劣をつけたがる。なぜかといえば、それも防衛のためである。悪人という普通でないヒトにならないように。
もどかしいものだが、その防衛の箍がなければ、血なまぐさい世の中になるうえ、人間という生き物は既にこの世から居なくなっているだろう。
その箍は、恐らく人間の頭の中に、その奥底に隠されているはずだ。これも、ヒトという生き物の防衛術である。
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