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美味しい料理と暖かい空気に気が緩んでいたのだろう。いつもの地曳なら、この続きが普通でない話になるのを察知して、笑って避けていたものを、深く考えずに質問を投げてしまっていた。
「今日のポンもそうだけど、探すんだよ色々。ただ、毎回探した先で何かあるんだ。……今日は地曳さんに会っただけだけど、大体力を使ったりとか色々する」
結城が苦い顔をする。
「力って……占いとかまじないとかそういう?」
「そう、魔法使わせようって魂胆だ」
地曳も苦い顔をした。
ただ、地曳のそれは、魔法という単語が普通に出てきてしまったことへの嫌悪と、自らに置き換えて想像したうえでその異常性への拒絶の、2重の意味での苦い顔である。
2人が苦い顔で見合う。と明日葉が小さく吹き出して笑いだした。
「ねえ、ユウト。確実に忘れて貰うために着いてくること了承したんでしょ。心配しなくともこの子喋らないわよ」
“確実に忘れてもらう”。不穏な言葉に耳を疑った地曳に追い打ちをかけるように、微笑んだまま、明日葉は言葉を置いた。
「――だって、あなたもでしょう?」
地曳は一瞬、息をするのを忘れた。
料理に視線を落とし、“確実に忘れてもらう”という単語をもう一度噛み締め、不安に襲われる。
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