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自分の行動ばかりに気を取られ、絵に描いたような普通のお人よしの結城を、微塵も疑うことなくついてきたが、本当は魔女の館に連れてこられたのでは? と。
「あー……じゃあ、超能力者だ?」
結城が「だからか」と納得の表情を浮かべて頷く。
その結城の反応に「あら」と明日葉が嬉しそうな声を上げた。
「分かるの?」
「なにも使ってないですよ。魔法じゃなくて超能力だろうって言い切ってたんですよ、彼女」
「そうなのね。で、なんで魔法見られたのよ?」
「ポンが前脚怪我してて――」
しかしそのまま、地曳のことには触れずに別の話へ移っていった。
喉が渇いた地曳は、マスカットジュースを流し込む。
どんなことが出来て、どうやって生きてきたのか、深く聞かれてしまうものだと思っていた彼女の心臓は震えていた。反面、心には、あるはずだと思っていた階段がなかった時のような、微妙な物足りなさが残る。
イレギュラーに対しての、普通の反応ではない。
顔を上げると、明日葉が結城に「浮いた話はないの」と不服そうにしているところだった。
赤の他人が、自分のことを超能力者と知ってそれを気にもとめずに普通に話している。
人生初の経験と、まるで自らが聞かれることを期待していたような反応をしていた事実に、地曳は信じられない気持ちで呆然とそれを眺めていた。
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「これ、結城と私の連絡先ね」
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