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犯人逮捕で終わった事件に大げさにとも思うが、確かに平常時でも夜道の一人歩きは怖かった。
現実めいた重い話に、地曳の足がようやく地を認識した。
「結城が居れば安心ね。……矢恵ちゃん、あの子は信用していいわ。なにせ、全く自分に関係ないことで、人の代わりによく分からない理由で格上ぶん殴っちゃうような子だから」
つまり喧嘩っ早くて情緒の不安定なお節介焼き、と。
「不良じゃないですか」
ますます関わりたくない。そう思い、とびきりの苦い顔をして、それから笑顔を作り、「夕飯ごちそうさまでした。美味しかったです」それだけ言って頭を下げ、店をあとにした。
「変な店だったろ」
「まあ」
小さな駅までの帰り道、交わした言葉はこれくらいで、また無言が続いていた。
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