3rd post : 床ではねる銀の水筒

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 ただ、手もとに来ない代わりに水筒は不自然に跳ね、机の上を転がって床に落ちた。  騒いでいた男子たちは静まり、その様子に何事かと教室中が静まり、教室には銀色の水筒が床で跳ねる音がやけに大きく響いていた。  たったそれだけだ。  だがそれだけで、地曳を取り巻く小さな世界はがらりと変わった。  小学2年生の男の子というのは単純で、その日は目にしてしまった超常現象に湧いた。  翌日からだ、周囲の地曳を見る目が変わっていったのは。 「昨日のどうやったの? おれにも教えて!」  まず次の日登校してすぐ、ひとりがそう言ってきた。 「なにを?」 「マジックだろうってお母さんが。タネがわかれば練習すればおれにも出来るようになるかもって」  しかし、当然タネなどないため地曳に答えることはできない。  知らない分からないを繰り返す地曳に、はじめきらきらした目で地曳を見ていた彼も、段々と不機嫌になった。  「なんだよ、教えるぐらいいいだろ」  ひとり占めが気にくわなかったのだろう。彼はふて腐れると「教えてくれるまでもう一緒に遊んでやんねーから」そう言って席に戻っていった。  その後本当に輪から外され、必死の弁解も虚しく結局彼らと遊ぶことはなかった。  それだけではない。     
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