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ただ、手もとに来ない代わりに水筒は不自然に跳ね、机の上を転がって床に落ちた。
騒いでいた男子たちは静まり、その様子に何事かと教室中が静まり、教室には銀色の水筒が床で跳ねる音がやけに大きく響いていた。
たったそれだけだ。
だがそれだけで、地曳を取り巻く小さな世界はがらりと変わった。
小学2年生の男の子というのは単純で、その日は目にしてしまった超常現象に湧いた。
翌日からだ、周囲の地曳を見る目が変わっていったのは。
「昨日のどうやったの? おれにも教えて!」
まず次の日登校してすぐ、ひとりがそう言ってきた。
「なにを?」
「マジックだろうってお母さんが。タネがわかれば練習すればおれにも出来るようになるかもって」
しかし、当然タネなどないため地曳に答えることはできない。
知らない分からないを繰り返す地曳に、はじめきらきらした目で地曳を見ていた彼も、段々と不機嫌になった。
「なんだよ、教えるぐらいいいだろ」
ひとり占めが気にくわなかったのだろう。彼はふて腐れると「教えてくれるまでもう一緒に遊んでやんねーから」そう言って席に戻っていった。
その後本当に輪から外され、必死の弁解も虚しく結局彼らと遊ぶことはなかった。
それだけではない。
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