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実際に見ていたという人間がそうSNSに呟いたり、動画を拡散している。だが、映像が映像なだけに投稿者が規制をかけたりしているので、信憑性は低いとも地曳は聞いていた。
「魔法使い、か」地曳の頭に、1週間前の出来事が蘇る。
目の前に広がった碧は、その碧が起こした柔らかな波は、その後見せつけられた別世界が起こした波は、彼女の記憶から一片たりとも離れようとしていない。
「ねー。宗教でも信じるかなあ普通」
「もしそうだったとしても、そんなので子ども殺されたら親もやるせないよ」
マスコミの取材にコメントする親族や、残された子どもを思い浮かべながら、地曳は昼に買ったスポーツドリンクに口をつけた。
魔法使いといえばさ。真希が地曳の持つペットボトルを突く。
「矢恵。水筒、浮かしたことなかったっけ?」
「んっ。……え?」
しばらく聞いていなかった問い、と真希のイタズラに噴きそうになるのをなんとか堪える。全く心臓に悪い。
聞いてきた割に興味なさげに、スマートフォンを弄りながら真希は続けた。
「小学生の頃、噂になってたじゃん」
「マキ知ってたの? 全然聞いてこないから知らないかと」
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