3rd post : 床ではねる銀の水筒

8/23
前へ
/154ページ
次へ
「仲良くなったの中学だったでしょ? 私もしばらく経ってから『そういえば噂の子か』ってなったからさあ。でも有名だったよね、タネ教えてくれないって。……そういえば、『どうやったらああなるか』ってその時男子たちが私のクラスきて練習してたんだよ。ギャフンと言わせたいって」 「そんなことしてたんだ」 「『魔法使い』で思い出したんだー」話半分にSNSチェックをしていた真希の手が止まる。 「実際どうなの、矢恵」 「どうって、転ばせただけ」 「どうやって?」  地曳は口角を上げ、小学生の頃からさんざんしてきたタネ明かしをする。 「あの机、元からガタガタだったから脚を踏んだの」 「それだけ?」 「うん。それだけ」 「へーえ。マジックだ」  それだけでひとりになっちゃったかあ。真希は軽く笑って、またスマートフォンを弄りはじめた。 「なっちゃったんだよねえ」地曳はため息をひとつこぼし、外を見た。  窓から見える裸の木に、1羽のカラスがとまった。 「でも、『魔法使いは1人でいい』って、殺された人たちは使えたのかな……魔法」  いつも目にしているカラスとは大きさが違うことに、種類が違うのだろうかと考えていた地曳を見上げ、スマートフォンを弄る手を止めた真希がぼそりと呟いた。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加