3rd post : 床ではねる銀の水筒

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#テレキネシスとチンピラ  超能力といっても、地曳のそれは、自らの元へ物や人を物理的に引きよせるのみのものだ。  この力がなにに分類されて、どういうものなのかなどは、1度そういった本を読んだ程度で、彼女にピンとくるモノはなかった。そのため、以来考えたこともない。  定義しろといわれれば、彼女は呆れた顔で「勝手にやって」と言うだろう。  しかし、自らの力の程度については、彼女はある程度認知している。あると知ってしまえば気になるもので、幾度となく部屋で試したのだ。  彼女が自らの力について知るのは、“引きよせる場所は意識を向けることでコントロールできる”こと、ただし、“その場所は自らの体に限る”こと、“力を使う=体力を消耗するわけではない”こと、生物だろうが重量のあるものだろうが、“見えるモノならなんでも引きよせることが出来る”こと、それから、”速度はコントロールできない”ことである。  そのモノに働く重力の向きを自らに向けるようなものだ。と彼女は理解している。特に速度において。  その証拠に、落下運動よろしく、同じ大きさのモノなら重いモノほど加速度が大きく、速く彼女の元に到達する。ピンポン球とゴルフボールなら、ゴルフボールが速い。  つまり、距離とモノによっては凶器になる。  実際彼女には、部屋でなにも考えずに引きよせ、壁に穴を空けた経験があった。  自らが意識し、望まなければ発生しない超能力。  しかし彼女は最近、なにか別の、悪いモノでも引きよせるような、そんな力が働いているのではないかと疑っている。
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