3rd post : 床ではねる銀の水筒

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 男はポケットに手を突っ込んだまま、背中を丸めて地曳の顔をのぞき込んだ。改めて見て眉がないことに彼女は気がつく。 「ふーん、なるほどなァ。コイツが超能力者(サイキック)ねェ……」  地曳の頭の先から足の先まで、射抜くように観察した後に放たれた言葉に、どきりとし、彼女は後ずさった。  周囲を確認する。人目はない。 「なにを、言っているんですか? サイキック?」眉をひそめて笑う。  そうして考える。どうして男がそう言うのか。  力なんて小学2年生のあの日以来、人前――特に外では使ったことがない。  新種のナンパならまだ助かるのだが。 「違ったか? 念力JK」  どうやらナンパではないらしい。地曳はつばを飲み込む。  超能力者だけならまだしも、力を特定してきた男に警戒心は一層高まった。  背後を確認した。あるのは小石。  5メートル範囲に転がっている小石を両腕と頭によせれば、目眩ましにはなるだろうか。地曳は角度と距離を考える。  しかし、外で使うことは出来るだけ避けたいというのが本心である。 「誰と間違えているのか知りませんけど、人違いだと思います」  とりあえずこの場から離れてから考えなければ。また接触があるなら警察に。  そう考え、地曳は歩き出した。が――「ちょっと待て」     
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