84人が本棚に入れています
本棚に追加
男はポケットに手を突っ込んだまま、背中を丸めて地曳の顔をのぞき込んだ。改めて見て眉がないことに彼女は気がつく。
「ふーん、なるほどなァ。コイツが超能力者ねェ……」
地曳の頭の先から足の先まで、射抜くように観察した後に放たれた言葉に、どきりとし、彼女は後ずさった。
周囲を確認する。人目はない。
「なにを、言っているんですか? サイキック?」眉をひそめて笑う。
そうして考える。どうして男がそう言うのか。
力なんて小学2年生のあの日以来、人前――特に外では使ったことがない。
新種のナンパならまだ助かるのだが。
「違ったか? 念力JK」
どうやらナンパではないらしい。地曳はつばを飲み込む。
超能力者だけならまだしも、力を特定してきた男に警戒心は一層高まった。
背後を確認した。あるのは小石。
5メートル範囲に転がっている小石を両腕と頭によせれば、目眩ましにはなるだろうか。地曳は角度と距離を考える。
しかし、外で使うことは出来るだけ避けたいというのが本心である。
「誰と間違えているのか知りませんけど、人違いだと思います」
とりあえずこの場から離れてから考えなければ。また接触があるなら警察に。
そう考え、地曳は歩き出した。が――「ちょっと待て」
最初のコメントを投稿しよう!