3rd post : 床ではねる銀の水筒

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 危うく空気に飲まれて流されるところだ。これ以上、関わる必要はないのだから、と。 「そっすか」  結城は、なぜか面白いものでも見ているような顔を地曳に向けている。 「さっきは、いきなり怒鳴ってごめんなさい」  怒りに来たというのに、なんの話を聞いているのだ。そう思いながらカモミールティーを口にする。 「……ん?」と、足元でモゾりと何かが動いた。「あ、ポン」  灰色のネコが、するりと地曳の足にすり寄っていた。 「……なんでお前がここに居る?」  椅子から立ち上がった結城がポンを持ち上げる。 「どっから入ったんだ。カモミールか……? 」  呟きながら慣れたように、リビングのドアに手を伸ばした。 「そういえば夕飯は? 明日葉さんのグラタンがあるけど……って2人じゃ気まずいか」 「気にしなくても」  用も済んだし帰りたい。というのが本音である。 「じゃ、ちょうど3皿あるし、持って帰る? 自家製のパンもあるんだ」  地曳の声が聞こえなかったかのように、結城が提案する。  この前食べた鶏肉の香草焼きを思い出し、急に空腹に襲われた。今日も夕飯は各自である。 「……怒られない?」 「ダイジョブでしょ。矢恵ちゃん明日葉さんのお気に入りだから」 「……持って帰る」 「準備するよ。待ってて」  結城は微笑み、リビングから出て行った。  地曳は床のカモミールを見、よく見てなかった店を眺める。  ハーバリウムにドライフラワー、造花、置物、工作用の型紙、蝋燭、レシピ本……なんでも置いてある、変な花屋。     
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