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彼には妻子があった。
箍が外れるほどの防衛本能が働いたとすれば、彼はなにを守りたかったのか。
それとも、もともと箍が外れた人間だったのか。
これも忘れてはならない。箍を誰かに外された可能性を。
ヒトは脆い。
例えばの話をしよう。
ある日、身近な人間が超常的な力を発現した。それを目撃した場合。なにもない平坦な人生を送ってきた男はどうなる? 日の目を浴びない人生を恨むあの娘は? 力を持て余し、使う場所を求めた若者は?
何を思って、どう行動し、どうなるだろう。
忘れるようと努める? 動画を撮ってSNSにあげるだけ? 本当に?
既に超常に触れている人間ならまだしも、そうでない人間は、疑う以外にこれを防衛する術を知らないというのに。
これは、ヒトの防衛する術、“普通”という基準の狭間に在る物語。
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