4th post : 1口も飲まれていないミントティー

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#テレキネシスと中学生  力が目覚める前、男勝りだった地曳矢恵は少女向けの番組より、ヒーロー番組が好きだった。力を使って、誰かを救うヒーローが。自分もなりたいと憧れた。  しかし、力が目覚めてから、画面の向こうで己の力を自由に使って闘う彼らが、うらやましくなってしまった。その世界に、嫉妬するようになった。  虚しくなってしまったのだ。  この世界は、力を使って良い世界ではない。  それこそが、地曳にとっては常識であり“普通”だった。  魔法を使う彼との出会いで、綻びを見せていたその常識は、この日完全に崩されることになる。  5月26日、土曜日。  15時上映開始の映画に合わせて立ち寄った、昼時のイタリアンレストランは、混み合っていて騒がしかった。  皆、料理を食べながら、午後からの予定やこれからについての話に花を咲かせている。 「矢恵またその組合せだ」そんな中、向かいに座る井上真希は、呆れたような声を出した。  真希は赤のオフショルダーにデニムパンツと、かなり派手な格好をしていた。髪も巻いて、その上には黒いキャップ。どれも浮くこともなく自然で、トップスに合わせたグロスも似合っている。彼女曰く「自分に合う長さとかトーンとか、色々気を遣ってるからね」らしい。     
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