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対して、地曳はグレーのシャツにたまご色のスカートといういつものパターン。
真希が呆れるわけである。
地曳も手を抜いたわけではない。出かける寸前までは、別の服を用意していた。ただ、鏡で確認し、気後れしてしまっただけで。
「でも、サンダルは新調した」
「本当だ、珍しくヒール」
テーブルの下を真希がのぞく。
「じゃあ、アウトレット今セール中だから、映画のあと服買おう。私選ぶわ」
「派手すぎないのをお願いします」
「えーやだ矢恵で遊びたいー」
「着せ替え人形なの?」
「そうなの」
真希のふざけた調子に合わせ笑う。
真希と出かけるのは、地曳の楽しみだった。彼女の服装がお洒落で派手なため、地曳が思い切りお洒落をしても普通でいられるし、彼女の話は聞いていて気持ちがいい。一緒に居て楽なのである。
気を遣わせてないか、たまに心配になるぐらいに。
「てゆうか混んでるねー」
「土曜だからね」
ドリンクを口にしながら、地曳は店内を見渡した。
最低限、店員が料理を運ぶことの出来る隙間を確保しているものの、不規則に並んだ丸テーブルと椅子に客が座れば、外へ出るのも至難の業。地曳たちも並ばずに入ることが出来たものの、相席前提の4人席に座っている。
毎回混んではいるが、真希と海側の駅方面へ出かける時には大体この店だ。他店舗で真希がアルバイトをしていて、社員割引で安いのである。
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