4th post : 1口も飲まれていないミントティー

3/26
84人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
 対して、地曳はグレーのシャツにたまご色のスカートといういつものパターン。  真希が呆れるわけである。  地曳も手を抜いたわけではない。出かける寸前までは、別の服を用意していた。ただ、鏡で確認し、気後れしてしまっただけで。 「でも、サンダルは新調した」 「本当だ、珍しくヒール」  テーブルの下を真希がのぞく。 「じゃあ、アウトレット今セール中だから、映画のあと服買おう。私選ぶわ」 「派手すぎないのをお願いします」 「えーやだ矢恵で遊びたいー」 「着せ替え人形なの?」 「そうなの」  真希のふざけた調子に合わせ笑う。  真希と出かけるのは、地曳の楽しみだった。彼女の服装がお洒落で派手なため、地曳が思い切りお洒落をしても普通でいられるし、彼女の話は聞いていて気持ちがいい。一緒に居て楽なのである。  気を遣わせてないか、たまに心配になるぐらいに。 「てゆうか混んでるねー」 「土曜だからね」  ドリンクを口にしながら、地曳は店内を見渡した。  最低限、店員が料理を運ぶことの出来る隙間を確保しているものの、不規則に並んだ丸テーブルと椅子に客が座れば、外へ出るのも至難の業。地曳たちも並ばずに入ることが出来たものの、相席前提の4人席に座っている。  毎回混んではいるが、真希と海側の駅方面へ出かける時には大体この店だ。他店舗で真希がアルバイトをしていて、社員割引で安いのである。     
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!